「ケーンート♪」
早朝からハイテンションな声の主はジャン。
「どしたの、ジャン」
「やだなあケント今日が何の日か分かっているだろ?」
「え?」
今日は5月17日だ。
別に休日でもないし、日曜という訳でもない。
…5月17日?
「あ、オレの誕生日っ!!」
「そういう事っ☆」
ぱちんとウインクなんか決めてる所がジャンらしい。
「と、いうわけで」
今まで何処にしまっていたのか巨大な箱を取り出して。
「ジュ・テームケントvボクの愛を受け取ってくれ〜vv」
「朝っぱらから道端で人を襲うなぁ〜!!」
哀れジャンはぼこぼこにされて粗大ゴミ置き場に捨てられていたそーな。
「そっかー、誕生日か……」
授業中だというのに、ケントは上の空だった。
それもそのはず。
何故か最近、ショウの態度がそっけないのだ。
丁度―そう、グラディオンと共に宇宙観光から帰ってきてから。
まわりの皆は同じだったのに、彼の態度だけが少しよそよそしくて。
――あれ以来、2人は口をきいてすらいない。
どうしたんだろ、ショウさん……………
「…ト、ケントっ、ケーンートー!!」
「うわぁっ!?」
突然頭上から降ってきた大声に、驚いて声を上げる。
「びっびっくりしたー…ナオキか」
「何一人でボーッとしてるんだよ」
どうやら、もうすでに休み時間になっていたらしい。
「せっかく今日もいい天気なんだし、外に出ようぜ!」
「あ、うん……」
答えつつも、ケントは全く乗り気がしていなかった。
少し雲は出ているものの、今日もダイバーランドは晴れている。
いつものケントなら、言われるまでもなく外で遊んでいるはずだ。
そのあたりには疎いナオキも、さすがに様子がおかしい事に気づいたらしい。
「悩み事でもあんのか?」
「え、べっべっ別になんでもないってばよ」
口調が違うあたりからして図星なのは明らかだ。
「何かあったんだろ、はっきり言っちまえよ!」
「えーと、あのその、えーと……」
まだしぶるケントに、仕方なくこちらからその名前を出す。
「……ショウさんの…事か?」
あの人の名前を出すのは少しシャクだけど、他に思い当たる事もない。
案の定何も言わずに黙ったままのケントを見て、その考えは確信に変わる。
「…やっぱりそうか」
納得すると、近くの席に座りこんで。
「俺でよけりゃ、いくらでも相談に乗ってやるぜ?」
「うん……」
小さく頷くと、ケントはぽつりぽつりと話し始めた。
「俺、さ……こないだグラディオンと一緒に宇宙へ行ってきただろ?」
ぴきっ。
…一瞬、ナオキの顔が引きつったような気がするのは気のせいだろうか…?
まぁひとまずそれは置いといて。
「あれから…ショウさんがなんか冷たいんだ……」
いたはずの人がいない。
ふとした事で名前を呼びそうになって、――泣きたくなる。
いつも一緒にいてくれた、たいせつなひと。
だいすきなひと。
「何かあったのかな、ショウさん………」
「へぇ……」
何だか妙に無理して作ったような笑顔を浮かべて答える。
「…ナオキ?」
「ケント、俺そのへんすっごくよーくわかる。」
「へ?」
きょとんとした表情で答えると。
「たぶんそれな、俺の頭に今これ→#がついてるのと同じ理由だ」
「え?え?」
ますます混乱気味に。
「よしケント、今日ショウさんの家に行ってみろ」
「ってそんな簡単に言うなよー!!しかもいきなり」
それができないから困っているのに、と心の中でツッコミをいれる。
「まぁまぁ大丈夫だって」
「どこにそうだって言える理由があるのさ」
「どこにもない。」
根拠なしで断言するあたりナオキらしい。
「あーのーなーっ!」
その時。
きーんこーんかーんこーん♪
示し合わせたかのようにチャイムが鳴り、生徒達が戻ってくる。
「あ、休み時間終わっちった」
ぴょんっと椅子から立ち上がり、
「んじゃ、頑張れよケントv」
「ナオキっ!まだ話は途中」
がらっ。
「ほら皆席につけ、授業始めるぞ!」
先生の声と共に、あわただしく自分の席に戻って行くクラスメイト達。
ナオキもそのどさくさに紛れて席についてしまっていた。
「…ナオキの奴っ#」
ぷいっと頬をふくらますと、隣のアオイの席から含み笑いが聞こえた。
その日の帰り。
ケントは、ショウの家の前に立っていた。
「……なんかキンチョーするなー…」
ここしばらく、彼の家を訪れた事なんてずっとなかった訳だし。
ましてや、口も聞いていなかった相手だ。もしかしたら、拒否されるかもしれない。
内心そんな思いを抱きつつも、首を振ってそれを打ち払う。
「よーし、いくぞっ!」
…………。
インターホンを押そうとする指が震える。
たった数cmの距離が嫌に長く感じられて。
「うー……」
それでも少しずつ、確実にその間を狭めていく。
あと3cm…2cm……1cm………
「あらケント君」
「うひゃあっ!?」
いきなり、後ろから声がかかる。
「レっ…レナさんっ!?」
「久しぶりじゃない、今日もショウに用事?」
「えっあっはいそういうことになりますです」
気が動転しているのかめちゃくちゃな日本語だ。
それを見たレナはクスッと笑うと、
「まぁいいわ。さ、上がって上がって♪」
ケントの背中を押して、そのまま家の中に連れ込む。
「お茶ぐらいしか出せないけどいいかしら?」
「いえっ、おかまいなく」
「そう?」
すると、レナはショウの部屋の方を向いて。
「ショウー!ケント君が来てくれてるわよー!」
ってレナさんちょっと待ったぁっ!?
まっまだ…まだオレ心の準備が…まだ…;
こっ、こういう時は深呼吸するんだっ!!
と、あわてて大きく息を吸う。が、
「…おかしいわね…来ないわ」
少しほっとしてその場に座り込む。
「ケント君、悪いけどショウの部屋に直接行ってもらえるかしら?」
「あっはいわかりました」
ぺこりと頭を下げて、部屋の方へ向かった。
こんこん。
「ショウさーん」
返事はない。
こんこん。
「ショウさん、ケントだよー」
…やはり返事は返ってこない。
「…勝手に入っちゃうよ?」
鍵がかかっているかもな、と思いつつ扉の横のパネルに触れる。
すると、いとも簡単に扉が開く。
中は明かりがついておらず、真っ暗。
「おじゃましまーす」
部屋に入って電気のスイッチを探す。
「えーと、確かここらへんに…あった」
押した瞬間ぱっと明るくなり、視界が開ける。
きょろきょろとあたりを見渡すと、ショウの姿はすぐに見つかった。
…が。
「寝てる……;;」
しかも、机に突っ伏して。
「うわ…ショウさんもこんな寝方するんだな……」
そりゃあ人間なんだから当たり前といっちゃ当たり前だが。
思えば、ケントがショウのこんな無防備な姿を見るのは初めてだった。
すべてにおいて自分とかけ離れていて、雲の上の存在だったショウ。
だけど、時にはこんな一面も見せるのかと思って、少しおかしな気分になる。
2人の間にあった壁が、少し低くなったような気がして――
「ショウさんの寝顔、かわいーv」
ガラにもなくそんな事を思ってしまったり。
と。
「ん………あ……れ…?ケント君…?」
「ってああっ!?」
起こしてしまったらしい。
「ごっごっごめんなさいっ!起こしちゃって……」
「……あ、そっか。寝ちゃってたんだ……」
起きたばかりでまだ頭がはっきりしないらしい。
こんなショウを見るのは初めてで、思わずぷっと吹き出しかける。
「そう言えばケント君、どうしてここに?」
「え……あ、えーと」
ここに来た目的を忘れる所だった。
ケントは急いで頭をフル回転させる。
「えっとさ…ショウさん、何か最近オレに…冷たくない?」
「……」
そのまま黙りこくる。
「オレが…グラディオンと一緒に宇宙観光へ行ったころからずーっと…」
ぴしっ。
“グラディオン”という単語を出した途端、ショウの頭に#マークが浮かんで消えた。
「ショ…ショウさん?…」
どぎまぎしながら問いかけると。
「…ごめん、ケント君」
「へ?」
どうしてショウさんがオレに謝るんだ?
考えている間にも、ショウの言葉は続く。
「その実は…僕とした事が恥ずかしいんだけど…;;」
少し顔を赤らめつつ答える。
「僕…グラディオンに嫉妬してたんだ;;」
「え?」
ショウさんがグラディオンにシット?
「本当にごめんね、ケント君……
勝手な僕の思い込みでつらい思いをさせて……
……これからはまた、一緒にいてくれるかな…?」
ケントは黙って頷くと、ショウにしがみつく。
「ショウさん、だーいすき」
言って向ける笑顔はとても可愛い。
その時、ふと思い出して。
「ケント君、今日誕生日だったよね?」
「え、うん」
拍子抜けしたように答える。
「…誕生日おめでとう、ケント君」
そう言って、最上級の笑顔を浮かべて。
「何も用意できなかったから、このくらいしか出来ないけれど……」
ケントは首を振る。
「オレはショウさんとまた一緒にいられる事が、一番うれしいから」
笑いあう2人の背中を、夕焼けが照らしていた。
あとがき:
序盤ショウさんがショウさんっぽくないですね……;
ああごめんなさいごめんなさい最近甘々ってーと和谷ヒカしか書いてないんでそれが入ってます;;
あやさんこんなものでごめんなさい;
あにあに☆さんに答えていただきリクエストどうも有難うございました!!!
自分がどんなリクしてしまったのか、すっかり忘れてしまっていたので…。
ケント総モテでお願いしたのをすっかり忘れてたんですよね。
それも、微妙に違うバージョンまで頂いてしまって感謝感激です!!!本当ですよ!!!
ケントの誕生日ネタでとっても萌えましたvv
本当に有難うございました。⇒Love Callバージョン違い(笑)